“大スキ!”  『好きで10のお題』より
 

今年の梅雨はなかなか明けない。
1日まるごといいお天気だったという日を、
そういや夏休みに入ってからは体感してなくて。
しかも、しとしと降るよな、いかにも梅雨どきの雨じゃない。
いきなり空一面が暗く曇って来て、
にわか雨どころじゃあない、
見る見る足元に流れが出来るほど、
そりゃあ威勢のいい土砂降りになるもんだから。

 『見逃した“日食”みてぇだよな。』

落雷の危険があるからって、
グラウンドでの練習が制限されちゃうものだから。
勿論、全然嬉しかねぇがと付け足して、
モン太もぶうたれていたっけね。

 「〜〜〜。////////」

だけども、そうそう悪いことばっかじゃないもんで。
例年ならば、レギュラー候補全員で、
ドイツの古城での合宿に出向く王城ホワイトナイツなのが。
出身者の縁者も居よう全国各地で、
悲惨な被害が多数出ていることと それから、
なかなか収まらぬ新型インフルエンザとの兼ね合いから、
今年は国内で催しなさいと見送られたのだとか。
どっちにしたって“慎んで”という結果なのだけれど、
それでも、

  ―― ドイツはあんまり遠すぎる。

どうせこっちだってハードなトレーニングプランを立ててんだ、
ほいほいと逢ってる余裕なんざねぇぞと。
判りにくいように内心で浮かれていたセナへ、
ぼそり囁いてくださった悪魔様でもあったれど。

 『き、気分の問題ですよう。/////////』

思わず言い返してしまい、
事情が通じていない他の皆様からの
“???”という注目まで浴びてしまったのは…
余計なおまけだったけど。(苦笑)

 「…。」
 「な、なかなかあがりませんねぇ。」

何とか時間を調整し、
先日催された“ノートルダム大ジャパンボウル”のDVDの予約にと、
Q街のスポーツショップまでと、お誘いしてのお出掛け。
今日は珍しくも朝から晴れてて、降水確率もさして高くなかったし。
どうせモールの中での移動ばっかなんだから、
お天気はそんなに関係しないってって思ってたのだけど。
途中のアーケイド、天井がぽっかりと途切れてるところで、
間の悪いことには突然のにわか雨。
周囲を往き来していた他の人たちも きゃあきゃあと逃げ惑う中、
ボクらも変わりなく、近くて余裕のある庇を求めて駆け出していて。
雨宿りに向いてそうな庇が手近なところから埋まってく中、
何とか辿り着いたのは、お花屋さんの店先で。

 「…。」
 「早く気がついたから、あんまり濡れませんでしたね。」

よかったよかったと“ニコニコ・てへへ”と、
この頃ではあんまり気にしなくなったはずの微妙な沈黙へ、
何とはなく…いかにも間が保てないような焦りっぷりで、
小柄な子の方からばかり話しかけているものだから。

 “あらあらvv”
 “余程のこと怖い先輩さんか何かなのかな?”

急な雨だと、
花桶を店内へ取り込むてんやわんやが、
何とか落ち着いたお花屋さんの店員さんたちが、
ちらほら見やる彼らだが、

 「…。」
 「えと…。///////」

そんな間柄だったなら、
むしろ何にも喋らないでいたセナくんだったはず。
急な雨の中、こっちだと言う代わりに、
大きな手で ぐいと掴まれた手首。
それをそのまま、離してくれない進さんなのへ、

 「…………あの。」
 「…。///////////」

どう言えばいいのかなと、言いあぐねているセナくんなのへ、
答えあぐねていたらしい進さんが、

 「…。」

それでも そおと、その手を外してくれたのへ。

 「うと…。//////」

ああやっぱり。
何て言えばいいのかが判らないまま、ごちょごちょしてたから、
強い雨脚が庇の幌を叩く音も大きくて、
小さな声で何か言ってたセナだったの、
進さんへは“離してください”って聞こえたのかも。
おいでと引かれての同じ方向、逆手に掴まれてた手だったので、
離してもさほどに…振り払ったような印象はないままで。
でもでも、そうじゃないんですと。
むしろそのままでいてほしかったのにと、///////
勇気が出なかった出遅れを、悔いてるだけじゃあ始まらぬ。

  うんと頷いて、えいと行動。

間近に下げられてた大きな手、今度はこっちから捕まえる。

 「…?」

何だ?と視線がそそがれたのへ、唇きゅうと咬み合わせ、
それでも“ふふふvv”と微笑って見せる。

 「あのあの…。//////」

もっと暑くなってしまったら、
こんなして手をつなぐの冬までお預けになるでしょう?
そんな風にうまく言えなくて、
ダメだなって思ってたら進さんに誤解させちゃって…。
だから“えい”と頑張ったら、あのね?

 「…。」

ボクの小さい手なんてその中で泳いじゃうほど大きな進さんの手、
ふっと離れてってそれから、

 (…あ。)

あやや、ご迷惑だったかなぁ?って、
そんな不安が沸き立つより前にネ?


  あらためて…進さんの方から捕まえ直してくれる。


進さんが朴念仁だなんて、蛭魔さんも桜庭さんも言うけれど。
そんなことは全然ないんだよ?
好きって告げれば、もっとの好きを。
さりげない形で 進さんは必ず返してくれるもの。

 「…っ。」
 「あ、そろそろあがりますね。」

雨脚が緩むのと同時、
見上げていた生なり色の麻の庇を透かして、
さあっと差して来た陽射しが眩しい。
白いオーバーシャツの裾がヒラリひるがえって、
駆け出しておいでと誘ってるよう。
いくら何でもそろそろの夏。
しびれを切らしてのフライングに見せかけて、
こそぉり呟く、胸のうち。


  ――― だ・い・す・きvv





  〜Fine〜 09.08.02.


  *なかなか上がりません、今年の梅雨ですが。
   昨日聞いたのが、
   今年は太平洋高気圧があまりに弱く、
   それで梅雨前線は横じゃなく縦になっているがため。
   なかなか北へと上がり切らぬまま、
   日本海側へと斜めにズレちゃあ戻ってくるというのの、
   繰り返しになってるんですってね。
   暑いのはかないませんが、
   夏が短いと、秋のお米が心配ですよね。
   早く明けてくれないかしらね。

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